一眼レフやミラーレスで動画を撮るということが、かつては一部で邪道のようにみなされていました。
しかし、ミラーレスカメラの動画撮影機能が向上したこと、YouTubeの登場に伴う動画文化の隆盛、それに伴う映像制作者(ビデオグラファー)の増加等の理由により、状況は大きく変化しています。
現在、趣味でない仕事としての動画撮影機材としても、ミラーレスカメラを選ぶ方は増えてきています。
カメラメーカー各社がリリースする新商品の多くが、動画撮影性能向上に力を入れていることも需要の高さが伺えるでしょう。
とはいえ、動画撮影のために改めてミラーレスを購入するのなら、性能や使いやすさが十分で、なおかつ自分の想定する用途に合ったものでなければなりません。
この記事では、お金を損しない、すなわち結果的に「衝動買い」になってしまわないための、動画撮影用ミラーレスカメラのメリットや選び方について解説しています。
ミラーレスカメラで動画を撮影するメリット
そもそも、なぜミラーレスカメラで動画を撮影するのでしょうか。単純に考えれば、専用のビデオカメラを使った方がいいように思えます。
しかしながら、あえてミラーレスで動画撮影を行うメリットというものが少なからずあるのです。
画質がよい
多くのビデオカメラと比べ、ミラーレスカメラはイメージセンサーが大きい傾向があります。
小型のビデオカメラのイメージセンサーの規格は「1/2.3型」、業務用のカムコーダーでも「1.0型(1インチ)」となっています。(シネマカメラ等一部の機種は例外です)
対して、現行ミラーレスカメラのイメージセンサーサイズは小さくても「4/3型」。さらに「APS-C」や「35mm(フルサイズ)」のカメラも多数リリースされており、これらはビデオカメラのイメージセンサーよりもかなり大きく設計されています。
そのため、ミラーレスカメラでは高画質の動画を撮りやすいとされています。
センサーサイズさえ大きければきれいな動画が撮れるというわけではありませんが、より高品質で高度な動画の表現に役立ちます。
高感度性能が高く、暗所撮影に強い
センサーが大きいということは、光をより多く採り込めるということ。
すなわち、暗所での動画撮影に強いというメリットがあります。
暗所撮影に強いカメラであれば、ISO感度を高めに設定できることに加え、高感度ノイズが発生しづらくなります。
照明がオフになっている屋内や夜の野外での撮影を行う場合、力を発揮してくれることでしょう。
「ぼかし」を作りやすい
映像表現においても重要な要素となる「ぼかし」は、センサーサイズの大きさによってその具合が左右されます。
センサーサイズが大きければ大きいほど、より濃密でとろけるようなぼかしが作りやすくなります。
背景がふんだんにぼけるような映像を撮影したいのであれば、ミラーレスカメラの方が適しているのです。
レンズを交換できる
一部を除き、多くのビデオカメラはレンズを交換できません。
あらかじめ備え付けられたレンズで撮影をすることとなります。
ビデオカメラのレンズはズームできる焦点距離が広くある程度の状況には対応できますが、それでも器用貧乏なところがあり、物足りなさを感じる場面も少なくありません。
その点、ミラーレスカメラはレンズの交換ができます。超広角から超望遠、明るい単焦点レンズまで、あらゆる用途や状況に合わせて臨機応変にレンズを取り替え、ベストな画を撮ることができます。
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動画撮影のためのミラーレスカメラの選び方
動画を撮影するためにミラーレスカメラを購入する場合、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。この項目にて、選び方のポイントについて解説していきます。
解像度およびfps
まず話しておきたいのは、「解像度」と「fps(フレームレート)」について。
解像度は「4K」や「FHD」と呼ばれるもので、この数値が大きいほどくっきりとした鮮やかな映像となります。
fpsは「動画1秒がどれだけのコマ数で構成されているか」をを意味しており、この数値が高ければ高いほど映像の動きががなめらかです。
スポーツ風景や動きの速い動物、乗り物等を撮影する場合は、fpsが高ければカクつきなくしっかり動きを記録することができます。
近年発売されたミラーレスカメラの多くは4Kでの動画撮影が可能であり、ものによっては120fpsという高いfpsでも撮れるようになっています。
一方2010年代前半にリリースされたような少し古いカメラの場合、FHD30fpsでの撮影がやっとの場合もありますが、その分安く入手することができます。
バッテリー
「ひとつのバッテリーで何分動画の撮影ができるか」ということはとても重要です。メーカーによってバッテリーの仕様は大きく異なっています。
たとえば、Panasonicが販売している「Lumix DC-S1」の連続撮影可能時間(FHD60fpsの場合)はおよそ140~150分。対して、FUJIFILMの「X-Pro3」は約45分となっています。
バッテリーがあまり長く持たないカメラの場合、予備を用意するコストが発生するだけでなく、交換の手間も考えなければならなくなります。
次に説明する「30分制限」と合わせて注意しておかなければならないポイントのひとつです。
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30分制限の有無
一部のミラーレスカメラには通称「30分制限」と呼ばれる機能制限がかけられています。
その名の通り、録画ボタンを押して動画撮影をしても、29分59秒で自動的にストップしてしまうのです。
ただし、PanasonicのLumixシリーズや「α6400」以降のSony製ミラーレスカメラはこの30分制限が解除されており、長時間の連続した動画撮影が行えます。
とはいえ、30分カメラを停止させず録画し続けるような状況は限られているので、人によってはそれほどこだわるポイントでもないでしょう。
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重さや大きさ
少し前までは「ミラーレス=軽量」というイメージが多数派でしたが、最近はそうとも言えなくなってきています。
もちろん、SonyのαシリーズやFUJIFILMのカメラは一眼レフに比べるとサイズが小さく、軽量な設計です。
しかし最近では、Panasonicの「Lumix DC-S1H」やCanonの「EOS R3」など大型ミラーレスカメラもリリースされています。
「たかがカメラの重さなんて……」と思われるかもしれませんが、これは軽視できるものではありません。
カメラというのは長時間携帯して使用するものです。
レンズ含めて500~1kg重さが違えば、身体への負担はかなり変わってきます。
また、サイズの大きなカメラはバッグへの収納にも気を遣わなければなりません。
そうした重さや大きさの問題は、動画撮影に対するモチベーション低下にもつながりかねません。
せっかく高いお金を出してカメラを購入したにも関わらず、「持ち出すのが面倒くさい」と放ったらかしになってしまうというのはあまりにも勿体ないことです。
ミラーレスカメラを選ぶ際は、自分の体力や使用スタイルがサイズや重さに適しているかもよく考えるようにしましょう。
パナソニック フルサイズ ミラーレス一眼カメラ ルミックス S1H ボディ 2420万画素 ブラック DC-S1H-K
その他のポイント
そのほかにも、気を付けておきたいポイントは複数あります。
たとえば、諧調を表す「bit」数について。
動画の色彩や露出を加工する「カラーグレーディング」に挑戦したいのであれば、10bitのものを買いましょう。
その際、ディスプレイやグラフィックボードも10bitに対応したものを用意しておく必要があります。
また、「このカメラではどのようなレンズが使えるか」も考慮しておいた方がよいでしょう。
現行のミラーレスカメラの中では、Sonyのαシリーズがサードパーティ含めて豊富なレンズラインナップとなっています。
レンズの種類が豊富であれば、状況に合わせた使い分けや機材費用の節約など、あらゆる場面で役立ちます。
そのほか気を付けておくべきポイントといえば、耐久性です。
「どれぐらいの暑さや寒さに耐えられるのか」「埃や水への対策(防塵防滴)はしっかり行われているか」も、メーカーによってかなり違ってきます。
海岸や雪山など厳しい環境での撮影を前提としているのであれば、耐久性のよさをアピールしているカメラを選びましょう。
たとえば、Panasonicの「Lumix DC-S1」やOLYMPASの「OM-D E-M1 Mark III」などがおすすめです。
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まとめ
ミラーレスカメラの動画撮影性能は年々向上しており、「RAW動画」のような本格的な機能を有した機器も登場しています。
とはいえ、カメラは決して安い買い物ではありません。
自分が考えている使い方に合っているかをよく検討した上で選びましょう。