大企業でも中小企業でも、映像による広告戦略を無視できない時代となりました。
優れたプロモーション映像を制作配信することによって、コストをかけずとも大勢にアプローチできる時代が到来しています。
最近ではクリエイターに外注するのではなく、映像制作を自社で内製化(インハウス化)する企業も増えてきました。
今回は、企業による映像制作の内製化にどのようなメリット、そしてデメリットがあるのかについて解説していきます。
映像制作内製化がもたらすメリット
映像制作を自社で内製化することは、どういったメリットをもたらすのでしょうか。
この項目で具体的に解説していきます。
外注費用を削減できる
内製化によって考えられるメリットのひとつは、1本あたりの制作コストの削減です。
たとえばPR動画の制作を外部に依頼した場合、1本あたり10~15万円程度の予算が必要となります。
より高いクオリティを求めるのであれば、20~50万の予算も考慮しておかなければならないでしょう。
しかし、自社で映像制作を内製化していれば、社員の月給の範囲内でPR映像や採用動画、企業紹介動画を作ることが可能となります。
もし複数本の動画を制作したとしてもその都度外注費用を支払う必要はなく、修正依頼の追加出費も発生しません。
わざわざ外注する手間を省き、気軽に制作できる
映像制作を外部に依頼するというのは、いささか手間を要します。
自社と相性のよいクリエイターを探し出すことからはじまり、価格交渉や契約の締結等、事前に行わなければならないことがたくさんあります。
内製化を行っていれば、そのような手続きを毎回行う必要もなくなるでしょう。
自社の映像制作スタッフに声をかけさえすれば、すぐに制作をスタートすることが可能です。
率直に言えば、スピーディかつ手軽に動画を作れるようになります。
自社で映像制作ノウハウを蓄積し、事業化も可能
映像制作を自社で行うようになれば、よい映像を作るためにノウハウやコツを学び、それらを自社の技術とすることができます。
映像制作というのはひとつの専門的分野。
適切なカメラワークや演出の手法、キャスティングや演技指導等々、必要とされるスキルは多数です。
外部にほぼ頼らず、自分たちの会社だけでハイクオリティな映像が制作できるようになれば、それ自体を事業として展開することも可能です。
映像制作を内製化することが、新たなビジネスモデルの構築にもつながります。
社内の人間と意思疎通がしやすくなる
外注においてトラブルの原因となりやすいのが、コミュニケーション不足によるもの。
外部クリエイターとのやりとりをうまく行うことができず、想定とは異なる制作物ができあがってしまうのはよくある失敗事例です。
内製化によって映像制作スタッフを社内に常駐させることができれば、すぐ打ち合わせが行えるだけでなく、その企業の情報や事情などを共有しやすくなり、コンセプト通りの映像制作が可能となります。
映像制作内製化のデメリット
映像制作の内製化は、一見さまざまなメリットがあるように思えます。
しかし、一方では注意しなければならないデメリットもあることを覚えておきましょう。
人件費は増加する
映像制作スタッフを雇用し自社に所属させれば、外注費用を削減することができます。
しかし、その分人件費が発生することを忘れてはなりません。
自社で雇用したスタッフには、継続して給与を支払う必要があります。
人件費を抑える方法として、すでに在籍している他部署の社員に映像制作を行わせるという方法も考えられます。
しかし、それほど有効とはいえません。
映像制作は奥が深いもの。
スキルや知識の不足した人材では、十分なクオリティのものを制作することが困難です。
それに加え、社員に新たな業務を課すことによる負担の増加も問題となるでしょう。
機材費も必要となる
映像制作を行うにあたっては、機材が必要不可欠です。
撮影用のカメラに三脚、照明にバッテリー、場合によってはスタジオも用意しなければなりません。
外注の場合、そういった機材費の大半はクリエイターが負担してくれますが、内製となるとそうもいきません。
スタッフが不自由なく制作を行えるようにするため、十分な機材費を用意する必要があります。
また、機材の導入だけでなく、メンテナンスの費用も考慮しておかなければなりません。
特にカメラやレンズの場合、修理費も高額となります。
スタッフに用意させる、あるいは安い機材で済ませることによって、機材費をある程度節約すること自体は可能です。
しかし大抵の場合、映像の質もそれに伴って落ちてしまいます。
制作本数が少なければ元が取れない
先述した人件費、および機材費は決して無視できるものではなく、会社の規模によっては大きな負担ともなり得ます。
さらに問題となりやすいのは、せっかく高い予算を組んで内製化したにも関わらず、実はそれほど映像を必要としていなかったような場合です。
映像を制作する機会が予想以上に少なく、毎月の人件費に見合った効果が得られない可能性も十分にあります。
外注費用を支払って依頼していた方が、結果的には安く済んでいたといったようなこともあり得るかもしれません。
ただ単に「流行っているから」というだけで内製化してしまうのは危険です。
クオリティ面では劣化しやすい
内製化の目的が「節約第一」であった場合、人件費や機材費をどうしても抑えてしまいがち。
ハイレベルな人材や機材を確保できず、中途半端な出来の動画しか制作できないといったことも、よくある失敗事例です。
費用自体は抑えられたものの、肝心のクオリティが伴っていなければ期待したような成果につなげることは難しくなります。
そうなれば、結果的には損と言わざるをえません。
一度内製化するとやめることが難しい
内製化による最大のデメリットは、「やめることの難しさ」です。
思ったような成果につながらなかったため映像制作チームを解散させるとなれば、今まで関わってきた人材の処遇も考慮しなければなりません。
アルバイトであればまだしも、正社員ともなれば一方的に解雇させることは難しくなります。
また、使用していた機材や撮影データを処分する手間も相当なものです。
さらに言えば、それまで行ってきたノウハウ習得のための学習や、撮影編集のために費やした時間もすべて水泡に帰します。
立ち上げること自体はかんたん、しかしやめることは難しいというのは、映像制作以外のさまざまな企業活動にもいえることでしょう。
映像制作内製化が成功しやすい企業とは?
映像制作内製化が功を奏すか否かは、企業の方針や環境に大きく左右されます。
たとえば、以下に挙げるような特徴を持つ企業の場合、内製化も効果的です。
頻繁に動画を制作する必要のある企業
YouTube上に動画チャンネルを解説しており、映像コンテンツを定期的に配信しているような企業の場合、内製化は非常に効果的です。
外注費用が節約できるだけでなく、社内でのスムーズなやりとりが可能となるので、滞りなくスピーディなコンテンツ制作が実現できます。
高度な専門的知識を必要とする事業を展開している
自社事業の専門性が非常に高く豊富な知識が求められる場合、内製化は有効な手段となるでしょう。
事業内容によっては外部の人間がその特徴や強みをうまく把握できず、意思疎通の失敗による失敗も生じやすくなります。
内製化によって社内の人間が映像制作を担当するのであれば、そうした知識の差を解消することが可能です。
まとめ
映像制作を内製化することは、成功にも失敗にもつながる可能性があります。
自社が内製によって本当にメリットを得られるのかどうか、十分に検討をした上で計画を進めましょう。